経済
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- Link > amazon:金融緩和の罠 (集英社新書)
- Link > amazon:スウェーデン・パラドックス
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この本が80年代のアメリカで書かれたことには衝撃を受けます。著者の洞察力による部分も大きいとは思うけれど、すでにアメリカにこういう現実があった、ということだろうから。

内容は、経済活動がグローバル化し、労働の水平分業が進んだ結果、先進国の個人は「シンボリックアナリスト」(と本書中で呼んでいる)のような、付加価値/創造性の高い仕事にシフトしていかなければならない、といったような話ですが、その必然性を説明する文脈には、経済から教育まで広く言及していて、説得力があります。

このような考えが実際に政策にも反映されてきた現実。
その後の、アメリカの強さの発揮と、日本の置いていかれぶりは、このあたりの視点を社会の中にどれだけ組み込むことができたか、というところも寄与しているのでは、と思えます。

過去20年間で、日本の名目GDPは変わらず、アメリカは約2倍に成長していますね。
アメリカは労働者への分配が極めて薄い社会なので、社会の不満は大きくなっていますが、経済成長自体には大いに成功していると思えます。(成長と分配は個別の問題として考えていいだろうと思います)


この本は、80年代の世界の大転換に日本がついていけていないということを問題意識に据えていますが、これは「The work of nations」の内容と見事に符合しています。

著者の提唱する、金融と情報産業へのシフトには完全には同意しないのですが、現状の分析と、そこへの経緯の説明はさすが、明快で説得力があると感じます。
しかし、情報革命+人工知能によるソフトウェア及びクリエイティブワークの指数関数的な重要性増大とその意味に、まだ多くの日本人は気づいていないのではと思います。
この変化を牽引するIT技術の動きを見ていると、アメリカとの開きには愕然とします。遠すぎて背中すら見えない感じではないでしょうか。

現在のアメリカとの開きは、とてつもなく大きいけれど、IT技術者以外の人達は、アメリカ人と同じ製品やサービスを日常的に使っていることで、「そこそこ近いレベルにある」と錯覚しているのではないかと思います。
日本のITはアメリカに「ちょっと遅れている」というようなレベルでなく、「全く歯が立たない」というのが現状で、それに危機意識がないのは、(ソフトウェア中心の時代にあって)ちょっとまずいのではという気がします。

やはり構造改革は避けて通れない、ということを再認識させてくれる本だと思います。


産業構造の変化の観点から、現在の日本社会の問題点を整理しています。

世界は90年代からIT革命により分散型意思決定、水平ネットワークの時代に入っているのに対し、
日本は高度成長期の製造業にこだわり、円安や補助金などで保護してきた結果、産業構造の変化が遅れ、中央集権型意思決定、垂直統合型の社会構造のまま、
IT時代に適した産業が生まれてこないため、低成長が続いている、といった内容です。
野口悠紀雄先生の本は分量が多くて読むのが大変なものが多いのですが、この本はコンパクトに先生の持論を読めるのでオススメします。

社会の構造から変わらないと、次の時代(あらゆるものがデータ化され、共有され、人工知能が牽引する時代)にはついていけないはずで、まさにその通りだと思うのですが、まずはアベノミクスに代表される利益誘導型の政治が変わらなくては、その道筋は見えてきません。

人々の意識がどのようにして変わっていくのか、そこにかかっているのでしょう。
その起爆剤は何になるのでしょうか。技術でしょうか、人の行動でしょうか。


現代世界の歴史がよく分かっていないと感じていたので、経済を軸に戦後の歴史を概観するこの本を読んでみました。

少し雑然としている感じですが、現在進行形の歴史とは、そんなものかもしれません。
現代社会を読み解く基礎知識として、ざっと全体の流れを掴むのに良い本だと思います。

アベノミクスでは、インフレの期待で経済が上向くという考えを前提としています。
期待を操作することで、確かに株価は上がりました。
しかし短期的な期待に影響されやすい株価は操作できても、実体経済はどうでしょうか。
現在のような需要不足の環境にあって、金融的な手法で、本当に実体経済は上向くのでしょうか?

そのようなカラクリが、経済専攻でもない一般市民にはよくわかりません。
「金融緩和」と言われただけでなにか魔法のような、自分にはよくわからない話と感じ、自分での判断を諦め、思考停止してしまうのではないでしょうか。
「アベノミクス」は、まさにそのような効果を狙ったトリックだと考えています。
(禁じ手の、将来借金からのバラマキで、見た目の経済は水増しされています)

この本では、一般人にはわかりにくい金融緩和の功罪を、現在の社会環境の特殊性などを中心に、シンプルな思考の積み重ねで読み解いています。
教科書的な経済理論が成立した頃の社会は、ピラミッド型人口の社会であり、成長途上で需要が供給を上回っていて、ボトルネックとなっている資金供給を潤沢にすれば生産が拡大し、問題が解決する時代だったのだろうと思います。

しかし前提となる条件は現在では大きく異なっています。
ごく当たり前の推論でも、そのような話は成り立たなそうだな、と感じられるのではないでしょうか。
そのようなところから、現在の金融政策を読み解くヒントを得られる本だと思います。

(だいぶ前に読んだ上に、流し読みだったので少しいい加減なレビューになります)

この本の内容は結構印象に残っていて、今でも社会のあり方を考える際の材料になっている気がします。
現在の社会からどういうところを目指したらいいのか、結構なヒントがあると思います。

スェーデンなど北欧の小国は、高福祉で高成長というイメージがあります。(実際にそうですが)
しかし「高福祉」という言葉から我々がイメージするような、単なるバラマキではなく、同時に競争の徹底があるからこそ成功しているというのが、この本を読むとよく分かります。

企業の保護措置などは取らず、競争力が落ちた産業、企業は淘汰するに任せる。
そのかわり、企業、産業間での人の移動がスムーズになるように、職業教育などの様々な仕組みを用意して、企業という「ハコ」でなく、個人を守ることに注力していることがわかります。
言い換えれば、日本においては円安誘導やバラマキで実施している「企業への福祉」を、「個人への福祉」に置き換えれば、自然と高福祉ということになるのかもしれません。
そしてそうすることで、恣意的な利益誘導からルールの徹底した市場となり、不公正な格差や労働慣行の解消、時代に適した産業構造へのスムーズな移行など、資本主義として重要な機能を回復強化できるのではないかと思います。
福祉理念のあり方、対象の捉え方次第で、(同じ財政規模あるいはそれ以下でも)高競争で高福祉な社会というのは実現可能なのかもしれない、と思わせてくれる本でした。

全部読むのは大変ですが、流し読みでも一読の価値はあるのでは、と思います。

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